津波のスピード(速度)

津波は水深が深ければ深いほど、速度は上がります。
津波は波とは書かれますが、その実態は「巨大な水の壁・塊」です。
私たちが普段目にする「波(風浪)」とは根本的に異なります。風によって海面付近だけが動く波とは違い、津波は海底から海面までの全ての海水が巨大なひと塊となって押し寄せる現象です。

そのため、その移動スピードは想像を絶するものになります。

水深が深いほど速い:ジェット機並みの猛スピード

津波の速さは、物理学の公式 v = √gh (v:速度、g:重力加速度、h:水深)で決まります。つまり、海が深いほど速く伝わるという性質を持っています。

深海(水深5,000m):時速約800km
なんとジェット旅客機に匹敵する速さです。太平洋を横断するような遠地津波は、このスピードで一気に押し寄せます。
沖合(水深500m):時速約250km
新幹線と同じくらいのスピードです。
沿岸(水深10m):時速約36km

陸地に近づき水深が浅くなると、底との摩擦でブレーキがかかり、速度は落ちます。しかし、それでも時速36km。これはオリンピックの短距離走選手(100m走)が全力疾走している速さです。

なぜ「見えてからでは間に合わない」のか?

陸に近づいて速度が落ちるということは、後ろから来る速い波が前の波に追いつき、ギュッと凝縮されることを意味します。これが、沿岸で津波が急激に高くなる理由です。
時速36kmは、車で住宅街を走るようなスピードです。一見遅く感じるかもしれませんが、「巨大な水の壁」がその速度で迫ってくる状況で、人間が走って逃げ切ることは不可能です。

東日本大震災での津波スピード

2011年の東日本大震災では、GPS波浪計などの観測データにより、詳細なスピードが記録されています。
沖合でのスピード
震源域に近い東北地方の沖合では、津波は時速数百kmで伝播しました。地震発生からわずか10分〜30分程度で沿岸に到達したのは、この驚異的な速さのためです。
陸上を遡上するスピード
津波が海岸線を越え、陸地を飲み込んでいく際のスピードも解析されています。
平坦な場所: 仙台平野のような障害物の少ない場所では、陸上でも時速30km〜40km程度の速さを維持したまま浸水が広がりました。
市街地: 建物やがれきにぶつかることで速度は落ちますが、それでも時速10km〜20km(人が全力で自転車を漕ぐ程度)の勢いがありました。

岩手県宮古市川代地区では連続写真の解析により、時速115kmまで達していたとみられます。

命を守るために

津波のスピードについて知っておくべき最も重要なことは、「目に見えてから逃げるのでは、物理的に間に合わない」ということです。
強い揺れを感じたら、すぐに高い場所へ
「まだ遠くに見えるから大丈夫」という判断は禁物
画像にある通り、津波は最後の一歩まで「自動車」や「俊足のランナー」並みの速さで襲いかかってくることを忘れないでください。
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